”不妊治療”と聞くと、以下のようなイメージをお持ちではありませんか?
「女性だけの問題では?」
「費用が高いので受けたくない」
「成功するかどうかわからないので不安」
子供を望んでいるカップルにとって、不妊治療は切り離せないテーマの1つです。
しかし、不妊治療にネガティブなイメージを持っていれば、一歩踏み出すのに躊躇することもあるでしょう。
- 不妊治療における日本の実態
- 男女における不妊の原因
- 不妊治療の方法
- 保険適用時の費用
- 不妊治療の期間
をお伝えします。
2020年には、14人に1人※が体外受精より生まれているデータもあることから、不妊治療はけしてめずらしいものではありません。
参考:不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック:厚生労働省
※840,835人のうち60,381人が体外受精で生まれている。
また、
- 一部の不妊治療が保険適応に
- 男性が不妊治療を受ける
といった時代の変化もあります。
1人で問題を抱え込まず、パートナーやまわりのサポートを受けながら不妊治療に望むためにも、ぜひ当記事を参考にしてみてください。
日本における実態
不妊の定義については、
”12か月以上にわたり定期的に避妊をしない性交渉があったにもかかわらず妊娠しない”
とされています。
男性または女性の年齢や生殖器系のトラブルが、おもな原因となります。
不妊治療を受けている割合は約4.4組に1組
厚生労働省の資料によれば、 不妊の検査や治療を受けた経験がある(または現在受けている)カップルは、約4.4組に1組(22.7%)というデータがあります。
また、カップルのうち約2.6組に1組(39.2%)が不妊に悩んでいるといった結果が出ています。
不妊治療による妊娠率は最大で45%:ただし年齢による影響も
厚生労働省の資料によれば、20代中盤〜35歳であれば「不妊治療により妊娠できる確率は25%〜45%」となっており「36歳以降は妊娠できる確率が落ちる」といった結果が出ています。
不妊治療における出生率は約70%
厚生労働省の資料によると、不妊治療により出産にいたるケースは71〜72%となっており、治療法によって大きな差はないといわれています。
不妊治療のおもな問題3つ:離婚のきっかけになるケースも?
不妊治療の問題3つ
- 身体的・精神的な負担:通院回数や治療に対する不安
- 仕事との両立がむずかしい:治療のために仕事を休む必要がある
- 経済的な不安:仕事を休んだ時に収入が下がる
厚生労働省の調査によると、不妊治療のために3割以上の人が「仕事を休んだことがある」と回答し、約6割の人は「勤務先からの支援はなし」と回答しているようです。
以上のことから、不妊治療には、身体的・精神的な問題だけでなく、社会的および経済的な問題があるといえるでしょう。
また、不妊治療を受ける過程で、おたがいの価値観のちがいに気づき、関係が破綻してしまい、離婚に至るカップル(夫婦)もめずらしくありません。
参考:嫁の不妊が発覚!離婚したい…離婚できるケースと慰謝料請求方法、離婚を求められたときの対処法
不妊の原因は男性にも?
不妊のおもな原因としては、つぎの3つがあげられます。
- 年齢(男女共通)
- 生殖器系のトラブル※
- 精神的なもの
※生殖器系のトラブル
男性の場合:精子の数や機能、精子が移動する通路のトラブルなど
女性の場合:卵子の数や機能、子宮のトラブルなど
不妊の原因【男女の比率は約50%】
”WHO(世界保健機関)の不妊症の7273カップル”の調査によると、不妊の原因は、女性と男性両方に原因があるといわれています。
不妊の原因の男女比
”男女の原因”が24%を占めていることから、不妊の原因の男女比は約50%ともいえるでしょう。
不妊の原因:「6割が男性」という回答も
厚生労働省が行ったアンケートによると、4割〜6割の人が「不妊の原因は男性」と回答しているようです。
この結果からも”不妊=女性だけの問題ではない”という認識は広まっているといえるでしょう。
男女別それぞれの方法
不妊治療の例
女性 | 男性 |
・タイミング療法 ・人工授精 ・顕微授精 ・体外受精 ・卵子凍結 | ・薬物療法 ・手術療法 ・その他(カウンセリングなど) |
前項目で「不妊の原因は女性だけの問題ではない」とお伝えしましたが、治療内容については、女性の方が体への負担が大きくなります。
そのため、治療期間はパートナーをふくめ、まわりのサポートが必要不可欠といえるでしょう。
将来、出産を希望する女性が、妊娠適齢期の自分の卵子を採取し低温保存する医療技術
不妊治療の枠からは少しそれますが、最近では”卵子凍結”という方法も注目されています。
年齢とともに、卵子の機能が変化するのは避けられません。
しかし、卵子凍結によって妊娠適齢期の卵子の保存・活用すれば、将来の妊娠の確率を上げられます。
詳細については、卵子凍結のメリットとデメリットを詳しく解説!をご確認ください。
2022年4月より体外受精などが保険適用で3割負担に
2022年4月(令和4年度)より、体外受精などの不妊治療が保険適用となりました。
2023年3月まで | 2023年4月より |
タイミング法排卵誘発法不妊の原因 となる疾患の検査・治療 など 一部のみ保険適用 | 人工授精体外受精顕微授精なども保険適用に |
参考:https://www.mhlw.go.jp/content/000901931.pdf
2023年まで体外受精などは”特定不妊治療”に区分されていた
2023年3月まで、体外受精などの一部の治療を受ける場合は、各地域の助成制度でもある特定不妊治療助成制度の利用がすすめられていました。
※1回の治療期間につき最大30万円まで
不妊治療の保険適用範囲が広がったことで特定不妊治療助成制度は終了し、現在は不妊治療における先進医療を希望する人たちへの助成制度が、各地域で開始されています(2023年7月時点)
参考:東京都福祉局:特定不妊治療費(先進医療)助成事業の概要
不妊治療:保険適用時の費用の目安
不妊治療の保険適用範囲が広がった結果、費用の目安は以下のようになります。
※検査代などもふくむ。
女性向け不妊治療:1回の治療期間あたりの費用の目安
保険適用時の費用 | |
タイミング法 | 約5千円 |
人工授精 | 約1万5千円 |
体外受精 | 約5~20万円 |
顕微授精 | 約15~20万円 |
男性向け不妊治療:1回の治療期間あたりの費用の目安
保険適用時の費用 | |
simple TESE | 約6万円 |
micro TESE | 約9万円 |
事実婚カップルも対象
不妊治療の保険適用については、事実婚カップルも対象です。
ただし、戸籍などの提出が必要なケースもあるため、ご注意ください。
年齢や回数の要件について
治療方法により、保険適用になる年齢や回数が設定されています。
(つねに保険適用) | 制限なし(条件により保険適用外) | 制限あり
・タイミング法 ・人工授精 | ・体外受精 ・顕微授精 ・胚移植 |
年齢
治療開始時期において女性の年齢が43歳未満
回数
治療開始時点の年齢 | はじめての回数の上限 |
40歳未満 | 通算6回まで (1子ごとに) |
40歳以上 43歳未満 | 通算3回 (1子ごとに) |
期間は2年~5年になることも
ニッセイ基礎研究および各医師の意見から、不妊治療の期間は2年〜5年といわれています。
参考:不妊治療にかかる期間とは?-約2年超で最大5年超、早くから自分の身体に関心を-
不妊治療の内容により期間が変わる
厚生労働省の資料にある各治療法の平均周期数から計算すると、おおよその治療期間は以下のようになります。
タイミング法(指導法) | 人工授精 | |
治療期間 (1周期1か月で計算) | 約8か月 (1か月×7.87周期) | 約5か月 (1か月×4.73周期) |
※1周期の期間は個人によって変化
参考資料:不妊治療の実態に関する調査研究について
不妊治療が長期間になる理由
不妊治療が長期間になる理由としては、以下のものがあげられます。
- 治療に入る前に検査が必要
- 段階を踏まえて治療方法を変えていく
- 仕事との両立のため通院回数がかぎられる
治療に入る前に、不妊の原因となる疾患を探すための検査が必要です。
検査終了後は、すぐに人工授精や体外受精をすすめられるわけではなく
のように、段階を踏まえて治療を行います。
また、治療期間中に仕事を継続していれば通院回数もかぎられてくるため、身体的・精神的なストレスも生まれます。
スムーズに治療を終えられたとしても約7か月、長ければ2年以上の治療期間になるため、夫婦関係に大きな影響をおよぼす可能性もゼロではありません。
新しい命を授かるための大きなカベを乗り越えていくためにも、おたがいに協力しあう姿勢が求められます。
すぐに取り組める不妊の対策方法
すぐに取り組める不妊の対策方法6つ
- 適度な運動
- 体を冷やさない
- バランスのよい食事
- 理想の体重をキープ
- ストレスをすくなくする
- 喫煙・飲酒などをひかえる
不妊の対策方法としては、おたがいが良好な健康状態をキープすることがあげられます。
まずは、普段の生活で取り入れやすい食事や喫煙・飲酒の習慣から、見直してみてはいかがでしょうか?
不妊治療を受ける前に知っておきたい”不妊専門相談センター”
不妊に悩むカップルの相談場所として、各地域に”不妊専門相談センター”があります。
おもな相談内容
- 不妊の原因
- 検査や治療について
- 不妊治療が受けられる医療機関
など。
以下のURLには、全国の不妊専門相談センターの受付時間や連絡先が記載されているので、不妊治療を受けるのに迷っている方は、ぜひご活用ください。
まとめ
【不妊治療】日本における実態
- 不妊は5.5組に1組が悩んでいる
- 治療を受けている人は約4.4組に1組
- 不妊治療による妊娠率は30~40%:ただし年齢による影響も
- 不妊治療における出生率は約70%
不妊の原因は女性だけではなく、男性にもあるといわれています。
また、2022年4月より体外受精などが保険適用で3割負担になったため、不妊治療を受けやすい環境が整いつつあります。
ただし、女性の年齢によって自然妊娠の確率および不妊治療による妊娠の確率は下がるため、パートナーふくめまわりのサポートが必要不可欠です。
この記事を読んでいただいた方のなかには、20代後半・独身で、現時点では出産を具体的にイメージできないこともあるでしょう。
しかし長い人生のなかでは、どのような変化が起きるかわかりません。
現時点では実感がなくても、30代後半にさしかかる前に「やっぱり子どもがほしい」という気持ちになる可能性もゼロではありません。
選択肢の1つとしてあげられる”卵子凍結”についての知識を身に着けておけば、未来の自分が後悔せずにすむ可能性もあります。
詳細については、以下のリンクよりご確認ください。