不妊の原因

2022年4月より不妊治療が保険適用になり、子どもを望むカップルにとっては、以前にくらべて治療を受けるまでのハードルが下がりました。

しかし、不妊といってもどのような原因かわからなければ、治療に踏み切るのに躊躇してしまうのではないでしょうか?

そこで、この記事では

  • 不妊の原因の男女比
  • 男女別の不妊の原因
  • 遺伝による不妊の可能性
  • 不妊に悩むカップルの現状

についてお伝えします。

不妊治療は男女で受けるケースもあるため、原因を把握し、おたがいの体や心に対する理解を深めておく必要があります。

新しい命を授かるまでのハードルを乗り越えるためにも、この記事を参考にしてみてください。

不妊治療 男性不妊
もくじ

不妊の原因:男女の比率は約50%

”WHO(世界保健機関)の不妊症の7273カップル”の調査によると、不妊の原因は、女性と男性両方に原因があるといわれています。

不妊の原因の比率

不妊の原因

厚生労働省が行ったアンケートによると、4割〜6割の人が「不妊の原因は男性」と回答しているようです。

この結果からも「不妊は女性だけの問題ではない」という認識は、広まっているといえるでしょう。

また、日本産婦人科医会によれば、カップルのうち10〜15%が不妊の可能性があるともいわれています。

参考:不妊治療の実態に関する調査研究

参考:日本産婦人科医会

男女別:不妊の具体的な原因は?

不妊のおもな原因としては、つぎの3つがあげられます。

  1. 年齢
  2. 生殖器系のトラブル(疾患)
  3. 精神的なもの

年齢については男女共通ですが、生殖器系のトラブルや精神的なものについては、男女で大きく異なります。

くわしくみていきましょう。

男女共通の原因:年齢によるもの

女性の年齢による影響としては、卵子の機能低下や卵子の数がへることがあげられます。

他の細胞とちがい、卵子は新しく生まれ変わらない(増えない)という特徴を持っています。そのため、年齢とともに卵子の機能が落ちてしまえば、受精卵の着床がむずかしくなるようです。

また、厚生労働省の資料によれば、女性の年齢が30代後半になると、自然妊娠できる確率が大きく下がるといったデータもあります。

参考:不妊治療について

男性の年齢による影響については、一般社団法人日本生殖医学会によると、”男性の加齢により自然流産の確率が上がる”といったデータがあると伝えられています。

また「男性も35歳を境に精子の老化が始まる」といった医師の意見もあります。

参考:一般社団法人日本生殖医学会

参考:公益財団法人日本産婦人科学会

女性不妊のおもな原因5つ

  1. 排卵・卵子の機能の低下
  2. 卵管の閉塞
  3. 子宮のトラブル
  4. 免疫機能の亢進
  5. その他(ストレス、原因不明など)

各原因の割合

女性不妊の主な原因

原因により、問題となる疾患や検査内容が変わります。

くわしくみていきましょう。

排卵・卵子の機能の低下

不妊の原因のうち、排卵のトラブルが20~30%を占めるといわれています。

排卵障害により卵子が正常に排出されないため、性交渉による妊娠の確率が大きく下がります。

【排卵・卵子の機能が低下する原因】

  • 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
  • 高プロラクチン血症

など。

多嚢胞性卵巣症候群では、卵巣に小さな嚢胞(液体がたまった袋)が発生し、月経不順や排卵障害を引き起こします。

高プロラクチン血症は、プロラクチンという排卵を抑制するホルモンが過剰に分泌され、正常な排卵ができない状態です。

【排卵の状態を調べる検査は?】

基礎体温の記録や超音波検査で調べ、プロラクチンの数値については採血で調べます。

卵管の閉塞

排卵・卵子の機能の低下とおなじく、卵管の閉塞は不妊の原因のうち20~30%を占めるといわれています。

卵管は、精子が卵子に向かう通路・受精した卵(胚)が子宮に移動するための通路です。そのため、卵管が詰まっている・機能が落ちているなどの問題があれば、妊娠にいたる確率は大きく下がります。

【卵管の閉塞にいたる原因】

  • クラミジア感染
  • 子宮内膜症

など。

クラミジア感染では炎症で卵管が塞がれてしまい、子宮内膜症では余分な内膜の発生により卵管を塞いでしまいます。そのため、精子や卵子が通過できなくなります。

子宮内膜症は、子宮内に存在する子宮内膜が、別の場所で発生する疾患です。不妊だけでなく、性交通の原因になることもある。治療は注射や手術など。

【卵管の閉塞を調べる検査は?】

卵管の状態については、子宮卵管造影で調べます。

子宮のトラブル

子宮のトラブルは、不妊の原因のうち10%を占めるといわれています。

子宮は、受精した卵子を維持する場所です。そのため、子宮に問題があれば、受精した卵子が子宮内で成長できず妊娠にいたらなかったり、流産の原因になったりします。

【子宮のトラブルの原因】

  • 子宮筋腫
  • 子宮内膜ポリープ
  • 子宮内膜症

など。

子宮筋腫は良性の腫瘍で、おおくは無症状です。そのため、気づかないうちに大きくなり子宮内膜や卵管を圧迫してしまい、妊娠を妨げたり流産の原因になったりします。

子宮内膜ポリープは、子宮内膜が過剰に増えて発生するかたまりです。月経不順や不正出血の原因となり、受精卵の着床を妨げます。

子宮内膜症は、子宮内に存在する子宮内膜が、別の場所(卵管など)で発生する疾患です。

【子宮の状態を調べる検査は?】

子宮卵管造影や超音波検査で調べます。

免疫機能の亢進

不妊の原因のうち、5%を占めるといわれています。

女性の場合、精子を異物と判断し攻撃する免疫抗体を持っていることがあり、免疫抗体が子宮や卵管で分泌されると、精子の動きを止めてしまうため受精ができなくなります。

【免疫の状態を調べる検査は?】

採血や、性交渉後に行うフーナーテストで調べます。

その他(ストレス、原因不明など)

過度のストレスも、不妊の原因の1つといわれています。

ストレスの影響により、排卵をコントロールする視床下部の機能が落ちてしまい、排卵を促せなくなるため、妊娠の確率が下がります。

男性不妊のおもな原因3つ

  1. 造精機能の低下
  2. 精路通過の問題
  3. ストレスによる性機能障害

造精機能の低下と精路通過の問題

造精機能の低下や精路通過の問題※では、射精はできるものの、精液中に精子が含まれていないため、性交渉による妊娠の確率が大きく下がります。

※精路(精路の通る道)が精巣静脈瘤などで塞がれている状態

造精機能の低下では、精子が少ない・作られていない・運動性が低いのに対して、精路通路の問題では精子が作られているものの排出できないのが大きなちがいです。

共通の原因としては、以下のものがあげられます。

  • 先天的なもの(原因不明)
  • ホルモンバランスの乱れ
  • 精子に対する抗体
  • 感染症

割合としては、造精機能の低下が約8〜9割を占めるというデータもあります。

検査方法については、精液検査や超音波検査で調べます。

参考:男性不妊とその要因 旭川医科大学産婦人科学講座

ストレスによる性機能障害

ストレスによる性機能障害については、勃起障害(ED)や腟内射精障害などがあげられます精神的なプレッシャーだけでなく、糖尿病などが原因になる場合もあるようです。

不妊は遺伝する?

遺伝による影響はあくまでも可能性の段階であり、不妊については、ここまでに紹介してきた不妊の原因や生活習慣の影響がおおきいといわれています。

そのため、この章では現時点で伝えられている、赴任と遺伝にかかわる研究結果の報告を紹介いたします。

男性不妊が遺伝する可能性について

大阪大学大学院の研究によると、男性の不妊では遺伝情報をふくむDNAを作るために必要な「PRM(プロミタン)という精子内のタンパク質がすくないため」といわれています。

とくに原因はなく、突然変異によるものとされています。

参考:男性不妊症と精子形成遺伝子

女性の不妊が遺伝する可能性について

女性の不妊症については、東京医科歯科大学の研究結果によると、Sox17という遺伝子の量が少ない場合、受精卵が着床しにくくなると報告されました。現段階ではマウスの実験結果によるものですが、ヒトの女性でもおなじことが起きる可能性があるといわれています。

参考:女性不妊の原因となる母体側の重要分子の同定

精子や卵子を作るための遺伝子に問題がある可能性も

熊本大学発生医学研究所によれば、男女共通の問題として「精子や卵子が作られる際に必要な遺伝子(マイオーシン)に問題があり不妊になる可能性がある」といわれています。

参考:不妊の原因にかかわる遺伝子を発見 -卵子や精子の形成に必要な細胞分裂のメカニズムを解明

不妊に悩むカップルは多い

厚生労働省のデータによると2020年には14人に1人※が体外受精より生まれている」といった結果が出ていることから、不妊治療はけしてめずらしいものではありません。

※840,835人のうち60,381人が体外受精で生まれている。

実際に、アンケートに答えたカップルのうち

  • 不妊の検査や治療を受けた経験がある→約4.4組に1組(22.7%)
  • 不妊に悩んでいる→約2.6組に1組(39.2%)

といった結果も出ています。

参考:不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック

また、妊活を開始後、68.4%のカップルが約6か月以内に医療機関を受診したと回答しています。

参考:不妊治療の実態に関する調査研究 最終報告書

不妊治療を開始するタイミングがわからない

仕事の都合や各カップルの方針、子どもに対する考え方もちがうため、不妊治療を開始するタイミングに明確な基準はありません。

参考:不妊治療の実態に関する調査研究 最終報告書

妊活のタイミングをコントロールしたい場合は卵子凍結という選択肢も

卵子凍結とは…?

将来、出産を希望する女性が、妊娠適齢期の自分の卵子を採取し低温保存する医療技術

不妊の原因は男女ともにあるとはいえ、女性の年齢にあわせて、卵子の機能が変化するのは避けられません。

しかし、卵子凍結により将来の妊娠の確率を上げられます。

詳細については、卵子凍結のメリットとデメリットを詳しく解説!をご確認ください。

2022年4月より体外受精などが保険適用で3割負担に

2022年4月より体外受精などの不妊治療が、保険適用となりました。

2022年3月まで2022年4月より
・タイミング法
・排卵誘発法
・不妊の原因となる疾患の検査・治療
 
など一部のみ保険適用
・人工授精
・体外受精
・顕微授精
・TESE(精子採取手術)
 
などが保険適用に
※TESE:精子を採取する手術方法で顕微授精とあわせて行う。

不妊治療を保険適用した場合の費用の目安は、以下のようになります。

※検査代などもふくむ。

不妊治療:1回の治療期間あたりの費用の目安

保険適用時の費用
タイミング法約5千円
人工授精約1万5千円
体外受精約5~20万万円
顕微授精約15~20万円
simple TESE約6万円
micro TESE約9万円
※タイミング法は2022年4月以前より保険適用

参考:不妊治療の実態に関する調査研究について

上記にあげた不妊治療は、数か月間で3~6回の治療を行うこともあるため、費用の総額としては以下のようになる場合があります。

  • タイミング法・人工授精:3~4万円
  • 体外受精:50万円

なお、不妊治療の保険適用については、事実婚カップルも対象となります。

不妊専門相談センター

不妊に悩むカップルの相談場所として、各地域に”不妊専門相談センター”があります。

おもな相談内容

● 不妊の原因
● 検査や治療について
● 不妊治療が受けられる医療機関

など。

おたがいに話しあうだけでは、問題を二人で抱え込んでしまう可能性もあるため、まわりのサポートを活用してみてはいかがでしょうか?

以下のURLには、全国の不妊専門相談センターの受付時間や連絡先が記載されているので、不妊治療を受けるのに迷っている方は、ぜひご確認ください。

参考:全国の不妊専門相談センター一覧

まとめ

男女別の不妊の原因については、以下のものがあげられます。

女性の場合男性の場合
・排卵・卵子の機能の低下
・卵管の閉塞
・子宮のトラブル
・免疫機能の亢進
・その他(ストレス、原因不明など)
・造精機能の低下
・精路通過の問題
・ストレスによる性機能障害

不妊治療は、女性だけの問題ではありません。

そのため、治療を受けるのであれば、女性だけでなく男性の協力も必要になってきます。

不妊に悩むカップルはけしてめずらしくなく、不妊治療を受ける人の割合も増えています。

新しい命を授かるためにも、2人だけで抱え込まずに、医療機関や不妊専門相談センターを利用してみてはいかがでしょうか?


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