卵子凍結の費用

「卵子凍結の費用は実際どれくらいかかるんだろう?」

「卵子凍結って保険は効くの?助成金は?」
近年、日本では少子高齢化や晩婚化によって卵子凍結が注目を集め始めています。

しかし、卵子凍結はとても高額なイメージもあり、費用の面が気になりますよね。

卵子凍結は一生の財産となる可能性があるため、将来の選択肢を広げるためにも検討する価値があります。その可能性は、働く女性や婦人科疾患を抱えている女性患者など様々です。

この記事では、卵子凍結の費用について詳しく解説し、地方自治体の助成金などについても掘り下げていきます。卵子凍結を検討している方や費用に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。

卵子凍結 費用
もくじ

卵子凍結とは

卵子凍結とは、女性が将来の妊娠の可能性を確保するために自身の未受精卵や、卵巣組織を保存する方法です。この方法は、妊娠を希望する年齢やタイミングの選択肢を広げることができます。

では、なぜ卵子を凍結する必要があるのでしょうか。女性の卵子は、年齢とともに質と量が減少します。そのため年齢の上昇と共に妊娠、出産への影響が大きくなってしまうのです。

卵子凍結は、将来の出産に備えて若い頃の卵子を保存することでき、病気や手術によって生殖能力の低下のリスクがある場合にも有用な方法です。

卵子凍結のプロセスは、以下の手順で行われます。

  1. 刺激注射
     卵巣を刺激して、通常よりも多くの卵子を成熟させます。このため、通常の排卵周期よりも多くの卵子を得ることができます。
  2. 卵子の収集
    成熟した卵子を収集するために膣から細い針を通して、卵巣にアクセスし、卵子を回収します。経膣超音波で卵巣の位置を確認しながら行われます。
  3. 凍結
    収集された卵子は、特別な凍結技術で-196℃まで急速に冷凍されます。凍結により、卵子内の水分が氷結し、細胞が傷つくことなく保存されます。
  4. 保存
     凍結された卵子は液体窒素のタンクで保存されます。これにより、数年から数十年にわたって卵子を保管することができます。

卵子凍結は、女性が将来の妊娠計画を柔軟にするための有用な選択肢です。ただし、卵子凍結は医療的なプロセスであり、費用やリスクも伴います。また、凍結された卵子を妊娠させる成功率は個人によって異なることも覚えておいてください。

したがって、卵子凍結を検討する場合は、医師との相談や専門家の助言を受けることが重要です。

社会的卵子凍結と医学的卵子凍結

卵子凍結には、社会的卵子凍結と医学的卵子凍結の二つの側面があります。

一般社団法人 日本生殖医学会:「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン」では下記のように位置づけされています。

  • 社会的適応応による未受精卵子の凍結
    加齢等の要因により性腺機能の低下をきたす可能性を懸念する場合には、未受精卵子あるいは卵巣組織を凍結保存することができる。
  • 医学的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結
    悪性腫瘍の治療等、医学的介入により性腺機能の低下をきたす可能性を懸念する場合には、未受精卵子あるいは卵巣組織を凍結保存することができる。

引用:「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン」

例えば、社会的卵子凍結はキャリアの発展や教育の追求、パートナーシップの形成など、病気や治療以外の理由で出産の時期を遅らせる場合に適応されます。

一方、医学的卵子凍結はがん治療や手術などの医療処置により、生殖能力が低下するリスクがある場合に限られます。

卵子凍結の費用はどちらも同じですが、もらえる助成金や年齢制限などが変わってくるので注意が必要です。

卵子凍結に係る費用

卵子凍結で発生する一般的な費用は60万〜80万円ほどです。
また、これは初診から採卵後凍結するまでにかかる費用で、凍結後はランニングコストと呼ばれる卵子凍結維持費が平均3〜5万円かかります。
さらに、凍結卵子を実際に使用する時は、体外受精時にかかる費用も発生することを忘れないようにしましょう。

卵子凍結に係る費用は大きく分けて3つの段階で発生します。
「採卵前」、「採卵時」、「採卵後」です。

それぞれの段階ごとの費用をまとめてみました。
卵子凍結費用は近年普及した方法であり、自由診療であるため、各クリニックごとで費用にばらつきがあります。特にパッケージ料金になっている場合は、何が含まれていて、何が含まれていないのかをよく確認するようにしましょう。

採卵前に係る費用

採卵前の段階では、自身の卵子の状態を把握するための検査や、カウンセリングなどに費用が発生します。
また、1回の生理周期で排卵される卵子は通常1,2個です。そのため、採卵時に通常よりも多くの卵子が排出されるように、排卵誘発剤などが使用されます。
排卵誘発剤は、採卵前の段階で最も高額な費用がかかり、内服薬や注射など様々な形があります。

項目費用
初診・カウンセリング5,000円~20,000円
検査(AMH検査、超音波エコー検査など)10,000円~50,000円
排卵誘発剤50,000~100,000円

採卵時に係る費用

採卵時には、採卵手術費用や凍結費用などが必要となります。また、施設によっては麻酔費用が含まれていないこともあります。

これらの費用は、施設や地域によって異なりますが、平均的には40万円程度です。

項目費用
麻酔10,000円~30,000円
採卵手術100,000~300,000円
凍結処理30,000~50,000円

凍結処理費用は、凍結容器1本単位で計算されるのが主流で、凍結容器1本に入る卵子はおおよそ3個です。

例えば、採取された卵子が3個以下なら凍結容器1本分(30,000〜50,000円)ですが、4個以上はその2倍の料金がかかることを覚えておきましょう。
また、採卵手術に関しても、卵子の個数単位で費用が発生する場合があります

採卵後に係る費用

採卵後には、いわゆるランニングコストと呼ばれる保存費用が年単位でかかることが多いです。

卵子の凍結保存は、液体窒素を利用した保存タンクと、徹底した温度管理が必要となります。凍結卵子が一度常温に融解されるとき、少なからず細胞の変性は避けられません。万が一、保存タンクの不調で、タンク内の温度が上昇してしまったら保存されている卵子は全て使えなくなってしまうのです。

大切な卵子を安全に保存するために、卵子凍結には保存費用が発生するのです。

また、凍結卵子の使用時には出庫費用が発生します。

項目費用
保存費用(年間)30,000~50,000円
出庫費用30,000~50,000円

その他の卵子凍結に係る費用

卵子凍結には上記にまとめた費用以外でも、施設や患者さんごとに費用が別途発生する場合があります。検査費用や排卵誘発剤などは1回で済むとは限りません。

また、クリニックごとに様々なプランを打ち出していることもあり、実際に発生する費用が複雑化している傾向があります。
もし、少しでも不安なことやわからないことがあれば積極的に医師やスタッフに相談するようにしましょう。公開しないようにしっかり納得して選択することが重要です。

費用についての世間のイメージ

卵子凍結には決して安いとは言えない費用が発生します。
下のグラフは、以前に自社で行ったアンケートの結果の一部です。

卵子凍結に興味があると答えた人に、「卵子凍結を行うまでにハードルに感じる点はどのような点ですか?」というアンケートを行いました。

卵子凍結のハードル
Q卵子凍結を行うまでにハードルに感じる点はどのような点ですか?(回答数: 157 )

卵子凍結未経験者でも、卵子凍結の費用が高いというイメージはかなりあり、実際に大きなハードルになってしまっていることがわかります。

詳しくはこちら

20代~30代女性550人に聞いた卵子凍結意識調査「ハードルと今後の展望」

卵子凍結の保険適応は?助成金は?

現在日本では、卵子凍結に対する保険適応は一切ありません。
医学的卵子凍結と社会的卵子凍結共に、自由診療で行われています。

また、助成金に関しては医学的卵子凍結のみ対象となっています。
一回の上限額は20万円で上限回数は2回まで、かつ対象年齢は43歳以下となっています。また、医学的卵子凍結の場合、凍結後の体外受精なども助成金の対象となっているので覚えておきましょう。

詳しくはこちら
卵子凍結記事 補助金 | Three
厚労省:生む未来への助成金
厚労省:温存後生殖補助医療

卵子凍結 補助金

今後の展望

高額な卵子凍結費用ですが、実は社会的卵子凍結の助成金制度も整備されつつあるのです。

2023年度より東京都では、社会的卵子凍結に対しても費用助成を行うことを発表しました。助成金額は1人あたり30万円程度の予定です。
本格実施は2024年度を予定していて、2023年度は200人の利用が想定されています。
発表されたのは2022年12月ですが、運用はまだされていません。(2023年6月現在)
2023年度は200人の適応ということなので、開始されたらすぐに枠が埋まりそうですね。

また東京都は同時に、卵子凍結に係る休暇や費用制度を導入した企業に対しても、助成も行うことを発表しました。
現在でも、メルカリやサイバーエージェントなどではすでに導入されており、ジャパネットグループでは一回40万円の費用助成制度が導入されています。

実はアメリカでは、企業が卵子凍結の費用助成を行うことが珍しくなく、Facebookやappleなどの大企業では、ほとんどが卵子凍結に対する助成金制度を導入しているのです。

世界の流れから見ても、今後日本の企業や、東京都以外の自治体で卵子凍結に対する費用助成制度が導入される可能性は高いと言えます。

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まとめ

卵子凍結は、女性が将来の妊娠の可能性を確保するために自身の未受精卵や卵巣組織を保存する方法です。近年の少子高齢化や働く女性の選択肢の一つとして、注目を集めています。ただ、卵子凍結の費用は60万〜80万円程度と高額であり、限られた人しか行えないのが現状です。

しかし、東京都では2023年度から健康な女性の卵子凍結に対して、助成金制度を導入することが発表されました。また、企業でも卵子凍結の高額な費用の負担を減らすため助成金制度を導入するところが増えてきています。

卵子凍結は医療行為であり、高額な費用とリスクが伴い、その高額な費用が原因で卵子凍結を選択することが難しくなってしまっています。

しかし、今回の東京都の発表のように、今後は日本でも卵子凍結の有用性が広く知られ、取り組みやすい環境に近づく可能性が高いです。
自分の未来について、様々な可能性を考えてみましょう。

AMH検査キット 卵子凍結

厚労省:生む未来への助成金
厚労省:温存後生殖補助医療
一般社団法人 日本生殖医学会:倫理委員会報告「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン」
東京都の少子化対策の現在
東京都、卵子凍結に1人30万円助成 200人対象 – 日本経済新聞

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