▼この記事の監修医師 ーさらに詳しく
大村美穂 医師
産婦人科専門医
がん治療認定医
NCPR(新生児蘇生法)専門(A)コース修了
JMELS(母体救命)ベーシックコース修了
JMELSアドバンスコース修了
女性のライフプランにおいて、妊娠・出産は大きな割合を占めます。そのため、現時点で結婚、出産の予定がない方でも、一度は真剣に悩んだ経験があるのではないでしょうか?
そこで、注目していただきたいのが卵子凍結です。
卵子凍結は、出産適齢期の女性の卵子を凍結保存できる技術で、費用は60~80万円ほどになります。
将来、出産を希望する女性にとって、卵子凍結は大事な選択肢の1つである一方で、費用が高額という問題も。
この状況をふまえて、2023年9月15日に東京都は、将来に備えて卵子凍結を希望する女性に対して、最大30万円の助成金を支給すると発表しました。
当記事では、東京都福祉局より発表された卵子凍結にかかわる助成金制度について、くわしく解説します。
東京都が卵子凍結への助成を発表
2023年9月15日、東京都は将来に備えて卵子凍結を希望する女性に、最大30万円の助成金を支給すると発表しました。
加齢等による妊娠機能の低下を懸念する場合に行う卵子凍結に係る費用を助成します。
卵子凍結にかかる費用は60万円~80万円といわれているため、助成金30万円が支給されれば経済的な負担が大きく減らせます。
<卵子凍結に係る費用>
内容 | 金額 | |
採卵前 | 診察料、検査費用、排卵誘発剤など | 100,000円~150,000円 |
採卵時 | 麻酔、採卵手術、凍結処理など | 200,000円~400,000円 |
採卵後 | 保存費用(ランニングコスト) | 年間30,000円~50,000円 |
最大の特徴
今回、東京都が発表した卵子凍結に対する助成金制度の特徴は、年齢などの一定条件を満たせば利用できる制度となっている点です。
卵子凍結助成の概要
1.対象者
2.主な対象要件
3.助成額
4.登録医療機関
5.説明会の日程・申請書類・申請方法
6.対象となる施術
7.助成金支給までの流れ
1. 対象者:東京都在住の18~39歳の女性
『東京都に住む18歳から39歳までの女性』が対象です。
年齢については、採卵を実施した日の年齢が基準となります。
例外のケース2つ
- 不妊治療のために卵子凍結を行う場合
- 東京都若年がん患者等生殖機能温存治療費助成事業の対象の方
不妊治療を目的とした卵子凍結は、今回の助成金の対象にはなりません。
また、東京都若年がん患者等生殖機能温存治療費助成事業の対象の方については、東京都保健医療局をご確認ください。
2. 主な対象要件:6つすべてを満たした場合に支給される
以下6つの条件を満たした方のみが、助成金の支給対象となります。
- 都が開催する、卵子凍結の正しい知識を持っていただくための説明会へ参加すること。
- 説明会への参加を申し込んだ日から都に助成金を申請する日までの間、継続して都内に住民登録をしていること。
- 説明会に参加した後、都が指定する登録医療機関において採卵準備のための投薬を開始すること。
- 未受精卵子の採卵又は凍結後に都が実施する調査に協力すること。
- 凍結卵子の売買、譲渡その他第三者への提供はいかなる場合も行わないこと、また、海外への移送は行わないこと。
- 卵子凍結後も都の実施する調査に対し、継続的に(最大5年間)回答すること。
卵子凍結における助成金を希望する場合は、指定された医療機関での投薬や、調査に協力する必要があるため、ご自身のスケジュール調整が必要になるでしょう。
3. 助成額:最大30万円の支給
最大30万円の支給を受けるには、条件があります。
最大30万円(下記①②の合計)
①卵子凍結を実施した年:最大20万円
②翌年以降:2万円×5年間
卵子凍結を実施した年度においては、最大20万円が支給されますが、翌年以降は調査に回答したタイミングで2万円(最大5年間)が支給される予定です。
問い合わせ先:子供・子育て支援部家庭支援課母子医療助成担当:03-5320-4362
4. 登録医療機関:61件(2024年1月26日時点)
2024年1月26日時点における助成金の対象となる登録医療機関は以下のリンク先の医療機関61件です。
5. 説明会の日程・申請書類・申請方法:まずはオンライン説明会に参加
下記、東京都福祉局のHPから参加申込を行うことで、オンライン説明会に参加することができます。
6. 対象となる施術:採卵準備のための投薬・採卵・卵子凍結
対象となる施術は、採卵準備のための投薬・採卵・卵子凍結となります。
不妊治療のための卵子凍結は対象から外れるため、ご注意ください。
7. 助成金支給までの流れ:5ステップで説明
助成金が支給されるまでには、一定の期間が必要です。
卵子凍結の助成金にかかわるお問い合わせ
問い合わせ先は、東京都福祉局の子供・子育て支援部家庭支援課母子医療助成担当となります。
東京都福祉局:子供・子育て支援部家庭支援課母子医療助成担当:03-5320-4362
卵子凍結には2つの役割がある
卵子凍結は、次の2つの役割があります。
- 医学的適応
- 社会的適応
1. 医学的適応:妊娠機能をなくす可能性がある人のために
卵子凍結の『医学的適応』とは?
がんや婦人科疾患のため、妊娠機能をなくす可能性がある人に対して、卵子凍結を行います。
具体例としては、小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業による、各都道府県の助成金制度があげられます。
2. 社会的適応:女性のライフプランを支えるために
卵子凍結の『社会的適応』とは?
女性のライフプランやキャリアプランを支えるために、卵子凍結を行います。卵子凍結は不妊治療とちがい保険適用にならず自治体の助成金もないため、企業の福利厚生、もしくは福利厚生をとおした助成金制度が行われています。
今回の東京都の発表は、社会的適応を目的とした『卵子凍結への助成金制度』といえるでしょう。
2024年2月時点では卵子凍結で助成金が支給されるのは東京都のみ
2024年2月時点で、卵子凍結を希望した際に助成金が支給されるのは東京都のみとなっています。
少子化問題に悩む日本においては、今回の東京都の発表をきっかけに、今後は全国的に卵子凍結の助成金制度が広まる可能性もあるでしょう。
東京都にさきがけて、千葉県浦安市では、2015年~2017年まで卵子凍結を希望する女性に対して助成金が支給されていました。
日経新聞:4人の卵子凍結承認 千葉・浦安市が女性に補助金
卵子凍結にたいする助成金支給の注意点2つ
- 2023年度の受付は上限200人
- 支給要件を満たす必要がある
1. 2023年度の受付は上限200人
東京都で行う卵子凍結にたいする助成金制度は、2024年度より本格的にスタートする制度のため、2023年度の受付については上限200人を予定しているようです。
2. 支給要件を満たす必要がある
今回、東京都が行う卵子凍結への助成金制度であれば、年齢の基準(18歳から39歳)だけでなく、説明会への参加や調査に協力するなどの条件があります。
また、不妊治療を受けている場合は、対象から外れるためご注意ください。
卵子凍結による妊娠率は29%という結果も
日本産科婦人科学会の資料によると、2020年に行われた卵子凍結による妊娠率は29.0%と発表されました。
参考:2020年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績:日本産婦人科学会
卵子凍結による妊娠率は、自然妊娠と同様に採卵時の年齢による影響が大きくなります。
日本産婦人科学会のデータは、全年齢を対象にした結果のため、29.0%という妊娠率がすべての方にあてはまるとはいえません。
卵子凍結について詳しく知りたい方へ
卵子凍結について、さらに詳しく知りたい方は卵子凍結のメリットとデメリットを詳しく解説!をご確認ください。
まとめ
2023年9月15日に東京都は、将来に備えて卵子凍結を希望する女性に対して、最大30万円の助成金を支給すると発表しました。
特徴は、持病がなくても、年齢などの一定条件を満たせば利用できる制度となっている点です。
対象も『東京都に住む18歳から39歳までの女性』となるため、社会的適応を目的とした女性のライフプランを支える『卵子凍結への助成金制度』といえるでしょう。
東京都福祉局:子供・子育て支援部家庭支援課母子医療助成担当:03-5320-4362