卵子凍結後の卵子の使用方法まとめ(卵子バンクとの違い)

「卵子凍結の後はどのように使われるの?」

「卵子凍結と卵子ドナーの違いは?」
卵子凍結は自分自身の将来の選択肢を広げるための手段です。
しかし、凍結した卵子は自身の妊娠目的以外でも使われることがあります。

今記事では、卵子凍結のその後、卵子ドナーや代理出産について詳しく解説していきたいと思います

卵子凍結 卵子ドナー
もくじ

卵子凍結とは

卵子凍結とは、女性が将来、希望するタイミングに合わせて妊娠ができるよう、自身の卵子を凍結保存する医療技術です。
この方法を利用することで、年齢や体調の変化による卵子の品質低下や妊娠力の低下に対処し、将来の妊娠を望む適切なタイミングで、自らの卵子を利用することが可能となります。

卵子凍結を検討する理由はさまざまですが、以下のような点が挙げられます。

  • 病気や治療の影響への備え

がんの治療や他の疾患による影響で、卵巣の全切除や、卵巣機能が低下する可能性があります。
卵子凍結によって、治療前に自身の卵子を保存することで、将来の妊娠に備えることができ、これを医学的適応と言います。

  • 年齢による卵子の品質低下への対策

女性の年齢が上がるにつれて、卵子の品質や数量が低下すると言われています。
卵子凍結は、若い時の優れた卵子を保存することで、将来の妊娠時に必要な卵子を確保しておくことができます。先ほどの医学的適応に対して、このように自身のライフスタイルに合わせた卵子凍結を、社会的適応と言います。

女性の社会進出が活発になってきており、キャリアやライフプランの選択肢が広がりつつあります。
卵子凍結を行うことで、医学的に妊娠が困難になる人も、結婚やキャリアの選択により後になってから妊娠を希望する場合でも、自身の卵子を利用することができるのです。

日本における卵子凍結の利用方法

日本では、卵子凍結の利用は一般的に自身の妊娠の目的でのみ使用されます。

凍結した卵子を自身で使用するときの一般的に流れは下記です。


<卵子凍結前>

  1. 対応医療機関で採卵後、卵子凍結

<卵子凍結後>

  1. 卵子の融解(必要時まで卵子凍結保管)
  2. パートナーの精子と体外受精をさせる(顕微授精など)
  3. 子宮へ移植

詳しくはこちら
卵子凍結の流れは?初診から卵子凍結、卵子凍結のその後のプロセスを解説します!

日本産婦人科学会が2020年に発表した結果によると、凍結融解未受精卵を用いた移植あたりの妊娠率は29%でした。
日本では、卵子凍結の認知度や実施数はまだまだ少なく、医学的適応における実施が多いこともあり、全ての人にこの確率が当てはまるとは限らないのでご注意ください。

参考:凍結融解未受精卵を用いた治療成績ー令和 3 年度倫理委員会(現臨床倫理監理委員会)‌ 登録・調査小委員会報告‌

卵子提供・卵子ドナーとは

卵子凍結後の卵子にはもう一つ、卵子提供として用いられる卵子ドナーの側面があります。

卵子提供とは、第三者により卵子ドナーとして提供を受けた卵子を、自身の妊娠に利用することです。
自分の卵子で子どもを授かることができない女性にとって、重要な選択肢の一つになりますよね。
海外では、卵子凍結技術を用いることで、提供卵子を長期間保存できる卵子バンク(エッグバンク)が普及されつつあります。

また、日本では、日本産婦人科学会により、夫婦ではない関係の体外受精が原則禁止されているため行うことができませんでした。

しかし、近年の晩婚化や平均初産年齢の上昇により、卵子ドナーの需要は高まってきており、2013年に日本産婦人科学会でも、病気などによる卵巣の機能停止などを条件として認められるようになりました

参考:日本産科婦人科学会倫理委員会倫理審議会 倫理審議会答申書―卵子提供による非配偶者間体外受精・胚移植実施について―  (追加審議事項を含む)

しかし、代理出産については現状禁止されているままです。
そのため、例えば病気により子宮を摘出してしまった妻を持つ夫婦の、卵子と精子のみを使用し、第三者に妊娠・出産を依頼する、などは国内ではできないので注意しましょう。

参考:代理解体に関する見解ー日本産婦人科学会

日本で卵子提供を受けるには

国内で卵子提供を受ける方法は大きく2つです。

  1. JISART(ジスアート)によって認定された体外受精実施施設で行う
  2. OD-NET(卵子提供登録支援団体)でドナーとマッチングする

JISARTは日本生殖補助医療標準化機関の通称のことで、国内における不妊治療などの生殖補助医療に対してガイドラインなどを制定しています。
卵子提供の法整備が進まない中、いち早くガイドラインを制定し、2008年から病気などによる限定的な条件下において卵子提供による体外受精を行っています

参考:精子又は卵子の提供による体外受精に関するJISARTガイドライン


OD-NETは、病気などが原因で自身の卵子での妊娠が出来ない女性のために、卵子ドナーを募り、不妊専門クリニックで体外受精が実施できるように支援している団体です。(現在は卵子ドナーの募集はしていません 2023/7/5現在)
卵子ドナーとレシピエントのマッチングを先に行い、卵子提供による体外受精が行われます

参考:OD-NET

いずれの方法も、重度の先天的な卵巣機能異常や、無卵子症などの病気が原因の不妊症が条件になります。
現在、不妊治療の延長線上で卵子提供を希望する方は、海外のクリニックと提携している業者に依頼することが一般的になっています。

JISARTでは、不妊治療後に自身の卵子での妊娠の可能性が限りなく低い場合も適用されるので、もし卵子提供を考えている方は問い合わせてみてください。

卵子提供体験記の紹介

実際に日本人の方で、卵子提供を受けている人、また卵子提供を行っている人のブログをいくつかご紹介します。

まだ国内では卵子提供の実例は少なく、その中でも海外で卵子提供を受けている人が多数を占めている状況です。
国内では卵子提供に関する法整備も遅れている状態なので是非参考にしてみてください。

国内で卵子提供を受けた方のブログ

国内で卵子提供を受けて、妊娠・出産を経験されている「pisanchi」さんは、2人のお子さんを卵子提供によって出産されています。
JISARTの提携クリニックに相談して、卵子提供を受けられたそうです。
「pisanchi」さんは長い不妊治療を受けて、卵子提供を選択されていて、卵子提供を受ける過程で感じたことなどをブログに載せています。

pisanchiさんのブログ:httpss://profile.ameba.jp/ameba/pisanchi/

卵子ドナーの方のブログ

「M鹿えりかさんの戯言」さんのブログでは実際の卵子ドナーとしての経験を載せています。
「M鹿えりかさんの戯言」さんはハワイで卵子提供を行ったそうです。
卵子ドナーになることを決心された日から、実際に卵子提供を行うまでの流れをブログに載せています。
卵子提供を受ける方もそうですが、卵子提供ってどんなものなのか気になる方にもとても参考になる内容です。

M鹿えりかさんの戯言さんのブログ:httpss://ameblo.jp/erikaaa0129/

海外における卵子凍結の利用方法

一方、海外での卵子凍結の利用方法は、自身での使用以外にもいくつかの方法で使用されています。

卵子ドナーを利用した卵子提供は、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの様々な国で、認められており、日本人で卵子提供を受けた方の多くは、海外で卵子提供を受けています。

また、代理出産に関しても認められている国は多く存在します
国によって不妊治療の一環として認めている国や、金銭の支払いが発生することを禁止した上で認可している国など様々です。
日本人の人も海外でなら卵子提供してもらうことは可能ですが、現状は不妊治療の経験があり、自身での妊娠が難しいと判断された場合のみに限ります。
しかし、デメリットとして両方法とも高額な費用がかかることがあります。
特に代理出産は、アメリカで行った場合2000万円以上と誰にでも行えるものではありません。

アメリカの卵子バンク事業

特に不妊治療や卵子提供が活発なアメリカでは、企業によるエッグバンク(卵子バンク)事業も展開されています。
卵子ドナーとして、卵子を提供するためには排卵誘発剤などを数日間投与したり、卵子採取時には麻酔が必要な手技を行うため、提供者の負担が大きい一面があります。
それに加えて、アメリカでは卵子提供に関する報酬の制限がないため、報酬を支払って卵子ドナーを集めているのです。

また、最近では高額な費用が伴う卵子凍結を無償で行う代わりに、一部の卵子をエッグバンク用に提供してもらうCofertilityというスタートアップ企業も立ち上がりました。

不妊治療に対して、商業的な面が強いアメリカならではですが、まだ法整備すら整っていない日本と大きく差があることがわかります。

卵子ドナーと卵子凍結における今後の展望

日本では、これまで倫理的な問題から代理出産などは認められてきませんでしたが、近年の不妊治療における保険適用が開始されたように、考え方が変わりつつあります。

特に海外のクリニック等を利用して、卵子ドナーにより生まれた子どもが増えてきているため、卵子提供の適用範囲の緩和よりも先に、卵子ドナーにより生まれた子どもの親権や、血縁上の母親の情報開示などの法整備の検討が進んできています

参考:精⼦・卵⼦・胚の提供等による⽣殖補助医療制度の整備に関する提案書-日本産婦人科学会

以前より精子提供による体外受精は、国内でも認められていることから、卵子提供の適用範囲が緩和される可能性は高いと言えるでしょう。

また、国内では、卵子ドナーに商業的な側面が生まれてしまうことが、大きな課題となっているので、卵子ドナーよりも卵子凍結による自身の卵子温存が推奨される可能性もありえますね。

まとめ

海外では凍結卵子は、卵子ドナーやエッグバンク、代理出産などでも使用されています
一方日本では、卵子提供や代理出産は原則認められておらず、卵子凍結に関しても認知度が低い状況です。
少子高齢化や晩婚化が進んでいる日本だからこそ、不妊治療における国からの支援が待たれています。
卵子提供を希望する方は、費用が高額であることに注意し、信頼できる医療機関を受診した上で実施をご検討ください。


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