卵子凍結と受精卵凍結の違いとは?

若いまま卵子を残しておくのに有効な卵子凍結や受精卵凍結。興味があっても「卵子凍結と受精卵凍結の違いはなに?」「どちらがいいの?」とお悩みの方はいませんか。

そこで本記事では以下の点について説明します。

  • 卵子凍結と受精卵凍結について
  • 卵子凍結と受精卵凍結の違い
  • 卵子凍結と受精卵凍結をするうえで押さえたいポイント

本記事を読めば、治療について理解して、自分にはどちらが向いているのかがわかるようになるでしょう。今後の妊活を考えるうえでお役立てください。

もくじ

卵子凍結と受精卵凍結について

卵子凍結と受精卵凍結は、どちらも将来の妊娠のために備える技術です。卵子が加齢により老化する前に凍結しておいて、いずれ妊娠を希望するときに用います。

女性が妊娠する力(妊孕性:にんようせい)は、卵子の老化によって低下します。卵子の老化は出産直後から始まっていて、35歳以降はその速度が速まります。

「妊娠を希望したときには妊娠する力が低下していて叶えられなかった」となる事態を避けるために有効なのが、卵子凍結と受精卵凍結です。老化する前段階で卵子や受精卵を凍結しておくことで、卵子の老化を止められるのです。

卵子凍結と受精卵凍結、それぞれについて説明します。

卵子凍結(未受精卵凍結)

卵子凍結は、受精前の卵子を凍結して保存する技術です。ご自身の状況が整って妊娠を希望する際に融解して、顕微鏡で受精させてから子宮に移します。受精卵凍結との対比で「未受精卵凍結」と呼ばれることもあります。

卵子凍結する目的は、次の2つです。

  • 医学的適応
  • 社会的適応

医学的適応は、疾患の治療によって将来の妊娠に影響する悪性腫瘍などにかかった方や、妊娠する力に直接影響する疾患にかかった方が該当します。治療前に卵子を凍結すると、治療による卵子への悪影響を避けられるのがメリットです。

社会的適応は、将来の妊娠に備えたいけれどもパートナーが決まっていない、成人女性が対象です。卵子の老化を少しでもくいとめて、将来妊娠する確率を高める目的で行います。

卵子凍結で注意したいのは、年齢制限です。日本生殖医学会のガイドラインには、卵子を採取する年齢として「40歳以上は推奨しない」との記載があります。クリニックごとの年齢制限は異なりますが「40歳までに」を1つの目安として考えるとよいでしょう。

参照:一般社団法人日本生殖医学会「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン

参照:公益社団法人日本産婦人科学会「ノンメディカルな卵子凍結をお考えの方へ

卵子凍結

受精卵凍結

受精卵凍結は、胚凍結とも呼ばれ、歴史が長い技術です。世界初の受精卵凍結は1983年に行われました。

受精卵凍結は、体外受精や顕微授精をして、ある程度発育した受精卵(胚)を凍結して保存する技術です。

-196度の超低温下で、ほとんど状態を変化させずに保存できるとされていますが、融解する過程では、5~10%以下の確率で受精卵が変性したり、破裂したりする可能性があります。

参照:日本産婦人科医会「(3)生殖医学の立場から(木村文則)

参照:一般社団法人日本生殖医学会「一般のみなさまへ – 生殖医療Q&A(旧 不妊症Q&A):Q14.受精卵の凍結保存とはどんな治療ですか?

卵子凍結と受精卵凍結の違い

卵子凍結と受精卵凍結は、複数の卵胞を育てて採卵し、体外で受精した受精卵を子宮に戻す点は同じです。

しかし、次のような違いもいくつかあります。

  • 受精と凍結のタイミング
  • 妊娠率
  • パートナーの必要性

それぞれの違いについて見ていきましょう。

受精と凍結のタイミング

卵子凍結は、卵子の状態で凍結保存して、妊娠を希望したときに融解して授精させます。受精前に凍結する点が、受精卵凍結との違いです。

一方受精卵凍結は、人工授精や顕微授精によって授精させた、受精卵の状態で凍結します。妊娠希望時に融解したときには、受精がすんで着床できる状態であるため、スムーズに子宮に移せます。

妊娠率

卵子凍結と受精卵凍結では妊娠率が異なり、卵子凍結の方が低いとされています。

論文による違いがありますが、日本産婦人科学会で用いるデータによると、凍結卵子1個あたりの出生率は、4.5~12%です。下の表に示したように、卵子を凍結する際の年齢や凍結する卵子の個数によっても異なります。

年齢別・卵子数別の少なくとも1人の赤ちゃんを持てる確率

年齢10個20個30個40個
28歳80%94%  
34歳75%91%95% 
37歳53%75%87%92%
40歳30%52%65%76%
42歳21%36%49%60%
44歳75%15%21%26%
引用:公益社団法人日本産婦人科学会「ノンメディカルな卵子凍結をお考えの方へ」)

凍結卵子の個数が多いほど、また凍結する際の年齢が若いほど将来の妊娠率が高まるとわかります。

一方、受精卵凍結の妊娠率は、卵子凍結より高値です。

日本産婦人科学会の「体外受精・胚移植等の臨床実施成績」を見ると、2020年の受精卵凍結(凍結杯)による妊娠率は、36.0%です。卵子凍結と同様に、複数個の受精卵を保存しておけば、さらに妊娠する確率が高まります。

そのためパートナーがいる方は、妊娠率が高い受精卵凍結をすすめられる場合が多いでしょう。

参照:日本産婦人科学会「2020年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績

パートナーの必要性

卵子凍結の実施にあたっては、パートナーの有無は問われません。40歳までの成人女性であれば希望できます(医学的な適応に関しては未成年も対象)。

一方受精卵凍結には、夫婦や夫婦に準じたパートナー両者の同意が必要です。凍結後に離婚や死別した場合の移植は禁止されています。

相手が決まっていない女性が凍結を考えるのであれば、卵子凍結のみという点を理解しておきましょう。

卵子凍結についてはパートナーがいなくても実施できます

卵子凍結と受精卵凍結で押さえたいポイント

卵子凍結と受精卵凍結は、将来妊娠する可能性を高めるために有効な手段ですが、行うにあたっては以下のような注意点があります。

  • 将来の妊娠・出産は約束されない
  • 卵子や受精卵を凍結した時点の年齢に妊娠率が左右される
  • 母体が老化するために起こる、妊娠出産にともなうリスクは軽減できない
  • 採卵などで身体への負担をともなう

どちらの技術も、将来の妊娠・出産が約束されるものではありません。また、卵子や受精卵を凍結した時点の年齢によって妊娠率が左右されます。凍結を考えるとしても、年齢を重ねてからの処置だと妊娠率が低下する点について理解して、計画的に備えるのがよいでしょう。

また、凍結した時点で卵子の老化は止められますが、母体の老化は止められません。そのため、高齢になってから出産する場合には、妊娠高血圧症や妊娠糖尿病などのリスクは残存します。排卵誘発剤を用いて採卵するため、身体への負担があるのも懸念点です。

上記を理解したうえで、卵子や受精卵凍結をしたいのか、するのであればいつなのかを考えておくとよいでしょう。

卵子凍結と受精卵凍結の違いを押さえて納得できる妊活をしよう

卵子凍結と受精卵凍結は、卵子の老化を防止して将来の妊娠に備える技術です。凍結した卵子をお腹に戻す点は一致していますが、受精と凍結のタイミング、妊娠率、パートナーの必要性などが異なります。

どちらの技術も、卵子を凍結する時点の年齢が若いほど、将来妊娠する確率が高まります。

そのため、凍結を考えるのであれば、高齢になってからよりは早めに考えておく方がよいといえるでしょう。まずは治療について知って、今後の妊活にお役立てください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
もくじ