卵子凍結に関する海外比較!

女性のキャリア形成やライフスタイルが多様化し、結婚や出産のタイミングも自由度が高まっています。その一方で、生殖医療の進歩により、女性が自分らしい人生をデザインしやすい時代でもあります。

近年、女性の生殖医療としての選択肢が広がってきた中で、卵子凍結は特に注目される手法です。キャリアや結婚のタイミング、健康上の理由など、女性の生き方の変化が目覚ましい現代特有のさまざまな要因が影響しています。ただ、海外では卵子凍結を社会的な制度としてサポートする国もありますが、日本ではどのような状況なのでしょうか。そして、海外の状況と比べて、女性のライフプランの視点から見たとき、日本の現状はどう映るのでしょう。

そこで、この記事では日本と海外における卵子凍結の最新トレンドや費用について知りたい女性やそのパートナーに役立つ情報をご紹介します。特に、欧米など先進国でどのように卵子凍結が活用されているのか、日本の現状と比較しながら見ていきましょう。

卵子凍結 海外比較
もくじ

卵子凍結の概念とメリット

卵子凍結とは、女性の卵子を体外で採取し、特別な医療技術を使って低温環境で長期保存することです。特に、年齢とともに卵子の質や量が低下することはよく知られており、それに伴って妊娠の難しさやリスクも増えていきます。そこで、早い段階での卵子の保存をすると、年齢と共に卵子の質が低下し妊娠率や出産リスクに影響がある女性のリスクを軽減させ、将来的に妊娠できる機会を増やすことができます。

卵子凍結を選択する女性の背景は多岐にわたります。以下のようなさまざまなシチュエーションを持つ女性たちが卵子凍結を検討し実践するケースが一般的です。

  • 年齢が進んできたが、健康状態や病歴などから自然に妊娠するのが難しくなってきた女性
  • 結婚や出産のタイミングは考えているものの、キャリアを優先して築くことや、安定した子育て環境を整えたいと希望している女性
  • 癌治療やその他の病気の治療により、卵巣の機能が一時的または恒久的に失われる可能性がある女性

具体例として、30代半ばでまだ数年は仕事のキャリアを積みたいと考えている女性・Aさんがいるとしましょう。Aさんは将来的には結婚し子供を持つことを望んでいますが、現時点ではまだ仕事を優先したいと感じています。そこで、Aさんは卵子凍結を選択し、若いうちに自分の卵子を保存することで、将来的に妊娠できる機会を作りました。

このように、卵子凍結のおかげで、Aさんは仕事とプライベートの両方を満喫しながら、妊娠の可能性も保つことができるようになりました。Aさんのように卵子凍結を活用すると、人生設計においてキャリアと家庭のバランスを模索している女性も、妊娠をより具体的でリアルに考えることができます。

日本における卵子凍結の現状

日本では、生殖医療の進化とともに、多くの女性が卵子凍結を活用するようになりつつあります。具体的な日本の卵子凍結の費用相場を見ると、クリニックによりますが、初回の採取と凍結に約50万~80万円、年間の保存費用は約5万~10万円程度が一般的です。この経済的な負担の大きさにより、特に日本の女性の間で卵子凍結の利用がまだまだ進んでいいない一因となっているのは明らかです。

卵子凍結

厚生労働省の公開データによると、2007年の総出生児数108万9,818人中、体外受精や顕微授精を経て生まれた子供は1万959人であり、全体のわずか1.8%に過ぎませんでした。

しかし、時代が流れ、2019年には総出生児数が86万5239人となった中で、6万598人、すなわち7%が生殖医療を活用した方法での出生となりました。こうした中、特筆すべきは2019年の凍結卵子を利用した妊娠治療において、全21万5203人のうち出生児数が5万4,188人と、約4分の1の成功率を誇っている点です。

このように、年々増加傾向にある背景として、国や自治体による公的補助制度が整備されつつあることが考えられます。特に、厚生労働省は2021年から、若年がん患者の不妊治療を支援するため、卵子や精子を凍結保存する費用の助成制度をスタートしました。卵子凍結の場合は20万円で、2回の施術まで助成が受けられます。また、がん以外の病気にも範囲を広げ、凍結時に43歳未満で指定施設で組織を採取することを条件に、受精卵なら1回35万円まで1人2回まで対象となります。

国を挙げて少子化対策に取り組む今、行政の施策が卵子凍結にも良い影響を与えていると言っていいでしょう。

参照:『不妊治療について』|厚生労働省

参照:若年がん患者の不妊を支援へ 4月から卵子凍結に20万円:東京新聞 TOKYO Web

参照:精子や卵子の温存に助成 43歳未満、がん以外も対象に:朝日新聞デジタル

参照:卵子凍結の補助金制度の比較 株式会社THREE

海外における卵子凍結のトレンドと費用

欧米諸国では、近年、卵子凍結の選択が一般的になってきています。特にキャリア志向の強い女性たちの間で、出産のタイミングを自分で選べるという選択肢として注目されています。背景として、各国の政府や企業も、この傾向をサポートする形でさまざまな取り組みを進めている状況が影響しています。

特にアメリカやイギリスでは、社員の福利厚生の一環として、卵子凍結の費用を補助する企業も登場しています。たとえば、AppleやMeta(メタ)〔旧社名:Facebook〕などの世界的IT企業は、女性社員のキャリア支援の一環として、卵子凍結手続きの費用を全額補助するプログラムを提供しています。たとえば、30代でAppleに勤めており、キャリアを続けつつも将来的には家族を持ちたいと考えている女性が卵子凍結を選択し、会社の補助で生殖医療を受けるというケースが広がっているのです。

海外

少子化対策を社会全体で取り組む欧米ですが、米国疾病管理予防センター(CDC)は2016年、アメリカ史上初めて30代女性の出生率が20代女性を上回るというデータを発表しました。30年以上にわたり20代後半の女性の出生率が最も高かったアメリカですが、30歳から34歳の女性の出生率は10万人あたり約103人、25歳から29歳までの女性は10万人あたり102人となっています。女性のライフプランの変化や医療の進展により高齢出産が増加していること、10代の出生率が低下していることが理由として考えられます。

欧米以外の国では、イスラエルの生殖医療の普及が目立ちます。イスラエルは、伝統的に子孫を残そうという意識が社会全体に根強くあることに加えて、国を挙げて出生率を高める福祉サービスが充実しています。そのため、世界銀行のデータによると、2020年のイスラエルの出生率は3です。つまり、イスラエル人女性は生涯1人あたり3人の子どもを設ける

卵子凍結の普及率が高いイスラエルでは、国が費用を全額補助する支援策が実施されています。国民全員が卵子凍結を無料で利用でき、その結果、イスラエルは人口比で見た卵子凍結の利用率が世界一となっています。

具体的には、厚生労働省の事業の一環で野村総合研究所に報告した調査結果を見てみましょう。2011年の人口100万人あたりの体外受精実施件数は、日本1,323件に対し、イスラエルは約4倍の4,065件でした。デンマーク1,972件、ベルギー1,629件、スロベニア1,574件など、生殖医療が普及している欧米諸国の中でも、イスラエルは突出して生殖医療が普及していることが特徴です。

このようにイスラエルでは、少子化対策の中心的な役割を生殖医療への支援が果たして来ました。18歳から45歳の女性は、家族構成や性的指向にかかわらず、パートナーとの間に2人目の子供が生まれるまで、生殖治療のための補助制度を無制限に利用できます。

欧米での卵子凍結の費用は、アメリカを例にすると5,000ドルから1万7,000ドル(約67万~230万円)が相場といわれており、日本と比較するとやや高額です。しかし、全額自己負担で費用を支払っている場合が多い一方で、企業や保険などで補助されるケースもあるため、実際の自己負担額は非常に幅があります。

以上のように、国内外の事例を見ると、各国での卵子凍結の普及状況や費用負担、制度面の違いが明らかとなります。それぞれの国により異なる制度や文化の下で、女性の選択肢として卵子凍結がどのように考えられているのか、そして支援されているのかを参考に、日本で暮らす私たちも卵子凍結に対する理解をより深めることができます。

参照:フェイスブックとアップル、社員の卵子冷凍保存支援 – 日本経済新聞

参照:Women in 30s now having more babies than younger moms in US|CNBC

参照:諸外国における不妊治療に対する経済的支援等 に関する調査研究  報告書 |厚生労働省(野村総合研究所)

参照:『5 不妊治療・生殖補助医療(ART)』|内閣府

参照:卵子凍結、知っておきたいこと 米国で利用者急増 – 日本経済新聞

まとめ:卵子凍結は国内外の状況を把握し最適な選択を

今、女性の生殖医療や出産の選択肢として、卵子凍結は注目を集めています。女性のキャリアや人生のタイミングに合わせて、妊娠や出産を考えることができるため、卵子凍結を検討する女性は少なくありません。しかし、国や地域によって卵子凍結の普及状況、費用、そして公的な支援の度合いは大きく異なるため注意が必要です。。

日本では、生殖医療に対する経済的な負担が大きい一方で、近年、少子化対策としての公的補助が増加してきました。その結果、卵子凍結を選ぶケースが徐々に増えています。一方、海外、特に欧米諸国やイスラエルでは、卵子凍結はすでに一般的な選択肢となっており、国や企業の強力な支援が見られます。特にイスラエルでは、少子化対策の一環として18~45歳の女性がほぼ無制限の資金援助を受けられる制度があるなど、積極的な取り組みが目立ちます。

このような国内外の情報を比較・理解することは、女性個人のライフプランや経済状況に合わせて最適な選択をするために大切な視点です。妊娠を含めた将来設計について、日本だけでなく、各国の事例やトレンドを参考にし、より幅広い視点から卵子凍結を考えてみましょう。


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