【産婦人科専門医監修】ピルを飲んでいても卵子凍結できる?

ピルを飲んでいても卵子凍結できるのか?
ピルを飲んでいても卵子凍結は可能ですが、採卵できる個数については減少する可能性もありますので、本記事を読んで注意事項などを確認していきましょう。

この記事の監修医師

島袋 朋乃医師
日本産科婦人科学会専門医

卵子凍結 ピル
もくじ

卵子について

卵子の質と数は卵子凍結を考える際にとても重要です。卵子凍結で採取される卵子の質が高く、数が多ければ不妊治療で使用した際の妊娠率は高くなります。

卵子の質

卵子の質は、妊娠する可能性や出産の成否、胎児の健康に影響します。年齢とともに卵子の質は低下していくため、妊娠率の低下、流産のリスク上昇、染色体異常を持つ胎児の発生率上昇が起きます。卵子の質を保つためには、健康的な生活習慣が重要と言われておりますが、実際に卵子の質は加齢による影響が大きいと考えられています。

 そのため、質の高い卵子を保有している若い時に卵子凍結を考えることが将来の妊娠確率を高めるために重要です。また、正常な染色体を持つ卵子を採取できる可能性が高くなるため、染色体異常を持つ胎児の誕生の可能性も低くなることが考えられます。

卵子の数

女性が生まれたときから持っている卵子の数は決まっており、年齢とともに減少していきます。卵子の数は出生時に約200万個と言われています。その後、年々減少していき、思春期を迎え、初潮を迎えることには20万個から30万個にまで減少していくといわれています。そして、35歳を迎えるころには約2万個から3万個にまで減少しているといわれています。また、35歳を過ぎると卵子の数が急激に減少し始めます。

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海外の研究で年齢と妊娠率について行った報告のなかで、30歳代後半では不妊率が10%から20%上昇し、40歳代では不妊率が45%上昇することも報告されています。1)

 卵子凍結の際に採取される卵子の数は卵巣内に存在する卵子の数に依存します。採取される卵子の数が多いほど、妊娠の確率をあげることができます。卵子の質と同様に年齢が低いほど卵子凍結の際に採取される卵子の数は多くなることが予測されます。

AMH値について

AMH(Anti-Müllerian Hormone、抗ミュラー管ホルモン)値は、卵巣の機能を示す指標の一つで、卵巣内にある未成熟卵胞の数と関連しています。
つまり、卵子の在庫数とも言えます。AMH値が低い場合は、卵巣機能が低下しており、卵子の在庫数が少なくなっている可能性を示しています。
さらにAMH値は年齢とともに低下していくため、卵子の数も減っていくと考えられています。

 卵子凍結を考える際には卵子の数は重要です。卵巣にある未成熟卵胞が多いことは卵子凍結の際に採取できる卵子の数が多くなることを予測することができます。そのため、卵子凍結の際にはAMH値を測定して、分析して利用されます。逆にAMH値が低い場合は、卵子凍結の際に採取できる卵子の数が少なかったり、閉経までの期間が近くなっていたりすることが予想されるため、早めの卵子凍結を検討した方がよいでしょう。年に一回など定期的にAMH値を測定して定点観測することも重要です。

参考:株式会社THREE「卵子の在庫には限りがある?AMH検査とは?」

ピルと卵子の数に関する疑問

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ピルを飲んでいると卵子の在庫数が減らないの?

ピルを飲んでいても、卵子の在庫数は減少します。一般的に用いられる低用量ピルは女性ホルモンである黄体ホルモンとエストロゲンを摂取して排卵を抑制しますが、年齢とともに減っていく卵子の消費は止めることができません。

ピルを飲んでいると卵子の状態を若く保てるの?

ピルの服用によって卵子の質を保つことはできません。ピルは先述した通り黄体ホルモンとエストロゲンを摂取することで排卵を抑制するものであって、卵子の質にアプローチすることはできません。

ピルを飲んでいるときと飲んでいないときのAMH値は変わるの?

ピルの服用中のAMH値は、ピルを服用していない場合と比較して変化すると考えられています。海外の研究では、ピルを服用している人はAMH値がピルを服用していない人と比べると低くなることが報告されています。2) これはピルの服用により女性ホルモンが調整されている影響で一時的にAMH値が変化しているものと考えられています。

ピルと卵子凍結に関する疑問

ピルを飲んでいると卵子凍結の効果が低下する?

ピルの服用を続けたまま卵子凍結を行うと、採卵時にとれる卵子の数が減少する可能性があります。一方で、ピルを服用したまま採卵を行ったとしても卵子の質には影響しないと考えられます。

卵子凍結をする場合にピルをやめるべき?

卵子凍結を行う場合は、一般的にピルの服用を中止する必要があります。
ピルの服用によって排卵が抑制されている状態では卵子凍結のための採卵が上手くいかない可能性があるためです。3) 卵子凍結の前には事前に医師に相談し、適切な指示に従ってください。

卵子凍結のどれくらい前にピルをやめるべき?

一般に卵子凍結の2,3ヵ月前にピルの服用をやめておくことが望ましいと考えられていますが、あくまで個人差があるため、医師の指示に従いましょう。

まとめ

卵子の質や量は、年齢の影響を大いに受けることが分かりました。日頃の生活習慣を見直すだけでなく、AMH検査を定期的に行ったり、AMH値が低い場合は早めの卵子凍結を検討すると良いでしょう

また、ピルを服用している方も、ピルの服用を継続しながら、卵子凍結を将来の選択肢として考えることは可能です。ただし、卵子凍結時の採卵個数に影響する可能性がありますので、卵子凍結を行う場合は、事前に医師に相談し、適切な指示に従ってください。


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参考文献

  1. Impact of female age and nulligravidity on fecundity in an older reproductive age cohort. Fertility and sterility – University of North Carolina https://doi.org/10.1016/j.fertnstert.2016.02.028
  2. Anti-Müllerian hormone levels among contraceptive users: evidence from a cross-sectional cohort of 27,125 individuals. – Center for Reproductive Health, University of California, San Francisco https://doi.org/10.1016/j.ajog.2021.06.052
  3. Ovarian reserve assessment in users of oral contraception seeking fertility advice on their reproductive lifespan. – Copenhagen University Hospital https://doi.org/10.1093/humrep/dev197
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