10人に1人の女性がかかるといわれる子宮内膜症。
子宮内膜症は年齢とともに症状が進み、不妊の原因になることが知られています。治療には手術や薬物治療が用いられる一方、手術による卵巣へのダメージも報告されています。
「子宮内膜症の手術をすすめられたけれど妊娠しにくくなるのではないか不安」「手術をしたほうがいいのかわからない」と悩む方がいるのではないでしょうか。
本記事では以下について説明します。
- 子宮内膜症とは
- 子宮内膜症の治療
- 子宮内膜症と不妊
- 子宮内膜症と不妊治療・卵子凍結
記事を読めば、妊娠を希望する方に対する子宮内膜症の治療にはさまざまな選択肢があり、将来の妊娠を視野に入れて治療を受ける必要があるとわかります。
記事を読んで、ご自身の希望に沿った治療を受けるためにお役立てください。
子宮内膜症とは
子宮内膜症とは、子宮内膜という組織が子宮以外の場所にもできてしまう病気で、10人に1人の女性がかかります。明らかな原因はわかっていません。
子宮内膜は、毎月妊娠の準備のために厚くなります。妊娠しないとはがれおちて出血して、月経がおこります。子宮内膜症では月経に同期して、子宮内膜ができた場所で出血や炎症を繰り返すことで、さまざまなトラブルになるのです。
初期は生理痛が主な症状ですが、症状が進むと生理のとき以外にも次のような症状が出現します。
- 腰痛や下腹痛
- 性交痛
- 排便痛
年々悪化する生理痛がある方は、一度病院でチェックしてもらうことをおすすめします。
子宮内膜症と不妊
子宮内膜症があると、半数近い方が不妊症を合併します。
初期には大きな影響がなくても、出血や炎症を繰り返すことで症状が進み、子宮や卵巣が癒着したり、卵巣に嚢胞(チョコレート嚢胞)ができたりします。症状の進行によって障害され得る妊娠の過程は、以下のとおりです。
- 排卵
- 卵子のピックアップ(排卵した卵子を卵管に取込む)
- 着床
- 精子運動性
- 子宮筋収縮受精
- 胚輸送
妊娠への影響を抑えるためにも、気になる症状があれば婦人科に相談しましょう。
(参照:日本生殖内分泌学会雑誌「子宮内膜症と不妊症」)
子宮内膜症の治療
子宮内膜症の治療は、大きく分けて以下の2つです。
- 薬物治療
- 手術
治療は子宮内膜症の部位や重症度、年齢、今後の出産希望の有無などを考慮して決定します。
薬物治療
薬物治療で用いられるのは、以下の薬剤です。
- 低用量ピル
- GnRH拮抗剤(アゴニスト)
- 黄体ホルモン剤
- 鎮痛剤
子宮内膜症は女性ホルモンの影響を大きく受けて症状が進むため、女性ホルモンの分泌を抑えたり子宮内膜が厚くなるのを抑えたりする薬が用いられます。痛みの症状がある場合には、鎮痛薬も処方してもらえるでしょう。
薬物治療だけでは痛みの改善が不十分な場合や、子宮内膜症によってできた嚢胞の大きさが大きい場合などには、手術も検討されます。
(参考:日本産科婦人科学会「子宮内膜症」)
(参考:京都府立医科大学参加婦人科学教室「子宮内膜症」)
手術
手術は大きくお腹を開けずに行える腹腔鏡手術が主流です。手術によって子宮内膜症の病巣を切除したり、症状によってできた癒着をはがしたりします。
手術の大きさや部位(卵巣など)によっては卵巣へのダメージが大きく、術後に卵巣機能が低下する可能性があります。つまり手術によって妊娠する力が低下するリスクがあるのです。
とくにもともと卵巣の機能が低下している方などでダメージを受けやすく、早期閉経の報告例もあります。
海外の生殖医学会などでは、手術に関して「妊娠率が改善するメリットと卵巣予備能が低下するデメリットのバランスをよく考慮して必要性を判断する」との見解が記されています。
治療方針は主治医と以下の点について相談したうえで決めるのが大切です。
- 年齢
- 重症度
- 痛みの程度
- 妊娠希望
- 悪性の可能性
- 年齢
- 卵巣機能
手術をしたとしても術後には再発のリスクがあります。そのため手術後も薬物療法を組み合わせることが多くあります。
(参考:東大病院女性外科「子宮内膜症」)
子宮内膜症と不妊治療
子宮内膜症の方の不妊治療には手術が検討されてきましたが、最近は以下の理由から手術よりも不妊治療を優先することが増えています。
- 不妊症改善のために手術をしたとしても必ずしも妊娠できるとは限らない
- 手術によって卵巣機能にダメージがある
- 手術後も再発の可能性がある
不妊治療には年齢や不妊期間、症状などが考慮されます。
若年で不妊期間が短い場合には、自然妊娠を待つ場合がある一方、治療に時間をかけていると、加齢や症状の進行で妊娠しにくくなる可能性があります。
そのため高齢や不妊期間が長い場合には、人工授精や体外受精、顕微授精などといった次のステップをすすめられる場合もあるでしょう。
その方の状態によって最適な治療は異なるので、詳細な検査を受けたうえで主治医とよく相談するのが大切です。
(参考:日本産婦人科医会「(4)子宮内膜症性不妊への対応」)
まとめ
子宮内膜症があって将来妊娠を希望する場合には、症状や治療に加えて妊娠への影響などについてもよく相談するのが大切です。卵子の老化や治療に伴う卵巣機能の低下に備えて、事前に卵子凍結する選択肢もあります。
かかりつけの婦人科に妊娠の希望を伝えたうえで、納得のいく治療を受けましょう。
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子宮内膜症性不妊への対応 – 日本産婦人科医会
https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=9
子宮内膜症が心配な方|日本医科大学付属病院
https://www.nms.ac.jp/hosp/section/female/guide/cure004.html
子宮内膜症(卵巣がんとの関係について) | 公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会
https://jsgo.or.jp/public/naimaku.html
子宮内膜症 〜がまんしないで月経痛〜 | 鳥取大学医学部附属病院
https://www2.hosp.med.tottori-u.ac.jp/introduction/3105/3106/21199.html