卵子凍結の助成制度を徹底比較!東京都とその他都道府県の支援制度をわかりやすく解説

少子化が深刻化する日本では、将来の妊娠の選択肢を広げるために「卵子凍結」という技術が注目を集めています。女性がキャリアを追求しながら、将来の家族計画も見据えられるこの技術ですが、その費用は決して安くはありません。そこで国や地方自治体は、卵子凍結をサポートするために助成制度を導入し始めています。

この記事では、東京都とその他の都道府県を中心に、社会的卵子凍結と医学的卵子凍結に対する助成制度の違いを比較し、現状の課題や今後の展望について分かりやすく解説します。卵子凍結を検討する女性にとって、どのような支援が受けられるのか、その全貌を一緒に見ていきましょう。

もくじ

卵子凍結とは?

卵子凍結とは、女性が将来の妊娠のために自分の卵子を取り出して、凍らせて保存しておく技術のことです。女性が年齢を重ねるにつれて、その卵子も老化します。そのため、卵子凍結をすることで、将来の妊娠を考えるタイミングで凍らせた卵子を使用できます。

卵子凍結をすると、女性は自分のキャリアや経済的な安定を追求したり、病気の治療を受けたりするなど、さまざまなことに時間をかけることができます。

卵子凍結は、女性の状況によって、社会的卵子凍結と医学的卵子凍結の2つの種類に分けられます。この記事ではこれら2つの種類の卵子凍結に対する補助金についてまとめます。

社会的卵子凍結と医学的卵子凍結

2013年に提示された『未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン』1)では、『社会的適応』と『医学的適応』として区別されて説明されています。

社会的適応(=社会的卵子凍結)
健康な女性が「卵子の老化」に備えて行う卵子凍結

医学的適応(=医学的卵子凍結)
がんなどの病気や手術があり、すぐには妊娠できない状況にあったり、将来的に妊娠が難しくなる可能性がある場合、つまり医学的な理由がある場合に行われる卵子凍結

卵子凍結前のエコーの様子

卵子凍結の費用

卵子凍結の費用は、採卵前にかかる費用、採卵時にかかる費用、採卵後にかかる費用(ランニングコストと呼ばれるもの)の3つに分けられます。

卵子凍結の費用

2023年5月現在、未婚の女性が卵子凍結をする場合、社会的卵子凍結、医学的卵子凍結のどちらのタイプでも保険が適用されません。また、クリニックによって金額が異なります。

一般的な費用として、目安となる金額は以下の通りです。

卵子凍結の費用

①採卵前にかかる費用

検査・排卵誘発剤: 5~15万円

②採卵にかかる費用

採卵・凍結: 15万円~40万円

③採卵後にかかる費用

保管料(以降年間): 3~8万円

​①~③の費用を合計すると、最初の年に約40円~60万円、2年目以降は年間3~8万円程度が一般的です。

卵子凍結の費用

社会的卵子凍結に対する助成金

まずは社会的卵子凍結の場合を見ていきましょう。

東京都の社会的卵子凍結に対する助成金

東京都は、2023年度から社会的卵子凍結をする女性に対して、1人あたり最大30万円の助成しています。2024年度も継続されることが決定しています。

さらに、個人の女性だけでなく、企業を対象とした卵子凍結に関する補助も積極的に行われる方針です。企業が従業員向けに卵子凍結に関する福利厚生制度を整備している場合には、最大で1社あたり60万円の補助金が支給される予定です。具体的な支給対象は、「卵子凍結のための通院に利用できる休暇制度や、卵子凍結費用に補助金を出す制度を創設した企業」3)を想定しています。

卵子凍結にかかる費用は非常に高額になるので、東京都の補助金制度が始まれば、多くの女性が利用することが予想されます。助成金があれば、費用の負担を軽減できるため、より多くの女性が卵子凍結を選択肢のひとつにすることができるでしょう。

全国の自治体の社会的卵子凍結に対する助成金

現在、東京都以外で社会的卵子凍結に対する助成を公表している自治体はありません。

国の社会的卵子凍結に対する助成金

現在のところ、国からの社会的卵子凍結に対する補助金制度は確認されていません。

医学的卵子凍結に対する助成金

次に医学的卵子凍結の場合です。

医学的卵子凍結に対する補助金

現在、社会的卵子凍結に対する補助金制度は東京都だけに留まっていますが、医学的卵子凍結に対する補助金制度は国や地方自治体からの援助があります

国は、医学的卵子凍結への補助を通じて、がん患者や不妊治療者の経済的負担を軽減するだけでなく、臨床データの収集を通じて生殖補助医療の研究を進めています4)。

国の補助制度を簡単に紹介します。

対象者

年齢:43歳未満の方(下限はありません)
所得:所得制限はありません
対象疾患:「小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン」(日本癌治療学会)の妊孕性※低下リスク分類に示された治療のうち、高・中間・低リスクの治療5)。※妊孕性とは、妊娠するために必要な能力のことを言います。
長期間の治療によって卵巣予備機能の低下が想定されるがん疾患・乳がん(ホルモン療法)など。
対象の医療機関:ホームページリンク先6)の一定の医療機関
補助金額:国の補助金額の上限は以下のとおりです。地方自治体の補助金額の上限に関してはその地方自治体ごとに異なる場合がありますので、詳細はお住いの自治体窓口にお尋ねください。

対象治療助成上限(1回あたり)助成回数
卵子凍結20万円2回まで
受精卵凍結35万円2回まで
卵巣凍結40万円2回まで
※医療保険適用外の金額が上限となります。7)
卵子凍結に関する費用計算する女性

補助金制度の課題

すでに一部の卵子凍結に対しては助成がありますが、以下の通り課題もあります。

  • 各自治体で補助金制度が異なるため、利用者にとって情報が分かりにくい
  • そもそも、卵子凍結を含む生殖補助技術に対する社会的認知度が低い
  • 卵子凍結費用の負担は減っても不妊治療費用の負担が重い
  • 補助金の対象者が限定的
  • 補助金額が十分でないことから、経済的負担が大きいままの人々も少なくない

まとめると、卵子凍結がよく知られていない、費用負担が重いという2種類の課題にわけられます。

まとめ

少子化が深刻な日本では、将来の妊娠に備える「卵子凍結」が注目されています。卵子凍結には高額な費用がかかりますが、国や地方自治体が補助金制度を導入し始めました。この記事では、東京都とその他都道府県の補助金制度を比較し、その現状と課題をまとめています。

東京都は2023年度から、社会的卵子凍結に対し1人あたり最大30万円の補助金を提供開始。また、企業向けに最大60万円の補助も行う予定です。一方、全国的には東京都以外に社会的卵子凍結に対する補助金制度はまだ広がっていません。

医学的卵子凍結については、国や地方自治体ががん治療などのために補助金を提供していますが、社会的卵子凍結に対する国の補助金制度はありません。

課題としては、各自治体で補助金制度が異なり情報が分かりにくいことや、補助金額が十分でないことが挙げられます。今後は、国全体での補助金制度整備や、生殖補助技術に対する認知度向上が求められます。

卵子凍結は少子化対策に重要な役割を果たすと考えられ、今後の政策の動向に注目です。


1)一般社団法人日本生殖医学会:倫理委員会報告「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン」、https://www.jsrm.or.jp/guideline-statem/guideline_2013_01.html、2023年5月14日閲覧

2)日本経済新聞:「東京都、卵子凍結に1人30万円助成 200人対象(2023年1月27日)」httpss://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC132DA0T10C23A1000000/、2023年5月14日閲覧

3)日本経済新聞:「東京都、卵子凍結の支援企業へ助成 職場環境整備を促進(2023年2月22日)」、httpss://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC228DW0S3A220C2000000/、2023年5月14日閲覧

4)厚生労働省:小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業、httpss://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/gan_byoin_00010.html、2023年5月14日閲覧

5)日本癌治療学会がん診療ガイドライン:妊孕性温存|診療ガイドライン、http://www.jsco-cpg.jp/fertility/、2023年5月14日閲覧

6)2021 厚生労働行政推進調査事業費:小児・AYA世代のがん患者等に対する妊孕性温存療法のエビデンス確立を目指した研究:妊孕性温存実施施設(研究協力施設)を探す、https://www.j-sfp.org/ninnyousei-outcome/index.html、2023年5月14日閲覧

7)厚生労働省:『妊孕性温存療法』リーフレット、httpss://www.mhlw.go.jp/content/ninyoseiA4_s.pdf、2023年5月14日閲覧

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