【福岡】セントマザー産婦人科医院 院長・田中温先生インタビュー

40年以上前から不妊治療に取り組まれ、国内初の不妊治療クリニックを開設した田中院長にインタビューしました。その評判から、遠方から通う患者も多く、県外からの通院者も半数近くに達しています。

セントマザー産婦人科医院
院長 田中温先生

経歴
1976年 順天堂大学医学部 卒業
1976年 順天堂大学医学部産婦人科教室 入局
1978年 順天堂大学医学部産婦人科大学院 入学
1982年 順天堂大学医学部産婦人科大学院 卒業
1982年 順天堂大学医学部第一病理学教室 入局
1983年 越谷市立病院産婦人科 医長
1990年~ セントマザー産婦人科医院 院長
2011年 順天堂大学産婦人科客員准教授
2016年~ 順天堂大学産婦人科客員教授
2016年~ ASPIRE Board members

所属学会・資格
日本産科婦人科学会認定 専門医・指導医
日本生殖医学会認定  生殖医療専門医・指導医
日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医・指導医
日本卵子学会認定 管理胚培養士
日本産科婦人科内視鏡学会 腹腔鏡技術認定医
麻酔科標榜医
母体保護法指定医師

もくじ

不妊治療を始めたきっかけ

先生が不妊治療を始めたきっかけについて伺いました。

「元々発生学に興味があったんです。発生学っていうのは、人間の受精から着床、そして赤ちゃんが誕生するまでの過程を学ぶ学問です。哺乳類、鳥類、両生類などいろんな動物がいますが、人間は哺乳類として生まれてくるまでに魚類、両生類、爬虫類の過程を経るんですよ。例えば、オタマジャクシがカエルに成長する様子なんかに興味を持っていましたね。

また、父と兄が産婦人科医だったことも大きな影響を受けました。そんな環境で育ったので、自然と興味が湧いたんだと思います。

そして決め手となったのは、医者になって2年目の頃に、イギリスでRobert EdwardsとPatrick Steptoeが発表した体外受精の第1児、Louise Brownが誕生したんです。1978年のことでした。これは本当に衝撃的で、今まで絶対にできないと言われていたことが現実になったわけですからね。この分野に強く興味を持ちました。それで、早い段階から生殖に関わる仕事をしようと決めました。

不妊治療を始めた時期

先生が不妊治療を開始されたのは40年以上前のことだそうです。

「1978年ですから、私が医者になって2年目、つまり20代後半の頃ですね。大学院では病理学を専攻しました。人体のすべてを見てみたいという思いがあり、解剖学を学ぶことができる病理学を選んだんです。20体ほどの解剖を経験しました。その後、病理学について理解が深まったので、今度は生まれてくる方、つまり不妊治療をやろうと決めました。

そして、越谷市立病院に行くことにしました。この病院には体外受精に必要な炭酸ガス培養液があることを知っていたので、自分の医局には戻らず、すぐに越谷市立病院に行くことに決めました。」

こうして、先生は不妊治療の分野に進むことを決意し、現在に至るまで40年以上にわたり、不妊治療に取り組んでこられたのです。

国内初の不妊治療クリニック開設

先生は、日本で最初の不妊治療クリニックを開設した人物です。

「当時、体外受精はすべて大学で行われていました。私が38歳の頃に開業し、これが最初のプライベートクリニックでした。それまで体外受精は公的病院や大学病院でしか行われていませんでした。しかし、そうした病院では様々な制約がありました。たとえば診療時間の制限や、担当医が毎回変わるといったことです。不妊症治療には一貫したケアが必要だと感じ、独立することにしました。

無精子症の治療

先生は無精子症の患者さんに対しても希望を提供しています。

「男性の場合は絶対不妊症と呼ばれる無精子症においても、精子になる前の段階の細胞が存在します。これらの精子細胞を顕微授精で卵子に入れて、電気刺激を与えて受精させることで、発育させることができます。この方法をROSI(ロッシ)と呼んでいます。それをもう20年前からやってますね。一度、睾丸を切って精子を探す時に、精子と一緒にそういう精子細胞というものも一緒に見つけられれば、 妊娠のチャンスは倍以上になる。それで、その細胞が(妊娠する)能力のある細胞かという、特定するのは非常に難しい。やっぱり経験と知識と技術と、これは相当なものが必要ですね。成功率はまだ10%程度ですが、研究を続けており、今後は30%程度の高い成功率を目指しています。その成功率が低い原因はもう分かっており、今後基礎実験をたくさんやらせていただければ、精子細胞を使った治療成績を上げる方法を見つける自信はあります。

日本の凍結技術

日本の凍結技術についても先生は高く評価しています。

「ガラス化法という技術は元々は赤血球を凍結するために牛で開発されたものですが、人間の卵への応用に成功したのは日本です。日本の凍結技術は世界一であり、体外受精で誕生する子供の93%は凍結胚からです。」

卵子凍結の利点と留意点

卵子凍結について先生は以下のように説明します。

妊娠の結果を左右するのは卵子の状態です。特に卵子の老化が大きな影響を及ぼします。将来の妊娠を考えている女性は、できるだけ若いうちに卵子を凍結することをお勧めします。20代が理想的ですが、遅くとも35歳までには未受精卵を凍結しておくと良いでしょう。日本では凍結によるリスクはほとんどありません。」

卵子・精子提供の現状

日本の生殖医療に関する法律についても先生は述べています。

「日本にはクローン規制法と親子法の2つの法律しかありません。現在、第三者の精子や卵子を用いた治療に関する法律が整備されつつあります。今まで日本にはそういうものがなかったために、外資系の企業、精子バンク、卵子バンク、こういうものがどんどん入ってきて、 アンダーグラウンドで今でもやっているようです。やっぱりこういうことは決して良くない。国が法律を整備し、コントロールすることで、安全で効果的な治療が提供されることを期待しています。

プレコンセプションケアの重要性

先生は若い世代への性教育の重要性を強調します。

日本では対外受精の施行数が世界一ですが、成功率は低いです。その原因は患者の平均年齢が高いためです。もっと早くから卵子の老化について知り、適切な年齢での妊娠を考えることが重要です。性教育を充実させ、非科学的なことはちゃんと訂正しながら、生物学としての正しい知識を教えることが必要です。」

セントマザー産婦人科医院での治療の流れ

最後に、セントマザー産婦人科医院での治療の流れについて先生は以下のように述べています。

「情報が最も重要です。まずはメールでお問い合わせください。東京での相談会も月に一度開催しています。オンライン相談も可能ですので、正確な情報を得るためにぜひご利用ください。セントマザー産婦人科医院では、世界中の患者さんからのオンライン相談をほぼ毎日受けています。

先生のインタビューを通じて、日本の不妊治療の現状と未来への期待が感じられます。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

▼ご協力院

セントマザー産婦人科医院

セントマザー産婦人科医院
https://www.stmother.com/

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
もくじ